ちりてこそ

読書記録のまとめ。

ドーパミンに翻弄されるな! 『スマホ脳(アンデシュ・ハンセン、2020)』

タイトルで敬遠してる人は読んでみると良いかも

個人的にはタイトルで損してると思う。もっと堅い、カッコいいタイトルでも良かったと思うのだが、ベストセラーになってるという事はこのぐらいハードルを下げた表現の方が良いのかな。私はこのタイトルを似非科学っぽく感じられたので、売れ出した当初は敬遠してしまいましたが、タイトルで判断せずに素直に読んでおけば良かったかな、と思えるような内容でした。○○脳という俗っぽいタイトルほど内容は俗っぽくなく、ざっくり言えばスマートフォンSNSが人に対してどのような影響を及ぼすのかについての論文や研究を紹介した上で、著者が現代の情報テクノロジーに対して警鐘を鳴らしてく、という内容です。

スマホは私たちの最新のドラッグである」(p.67)

以前読んだ「デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する」で得た知見ですが、スマートフォンのゲームアプリやソーシャル・メディアを作っている企業には現在の世界最高のエリートたちが就職しています。そのめっちゃ優秀な人たちが真剣に注意力を奪うためにはどうすれば良いのかを考えているので、何も考えないで使ってると知らず知らずのうちにそれらの仕組みに絡め取られてしまうぞ、と注意を促します。著者の言葉を借りれば、

デジタルのメリーゴーラウンドにグルグル回されてしまうのは簡単だ。

これは言い得て妙で、調べたいものがあって端末を手に取ったはずなのに、気付いたらyoutubeで関係のない動画を観ていた、という現象には多くの人が経験があるはずです。私なんて毎日そんな有様で、これもしっかりとビッグ・テックの拵えたメリーゴーラウンドではしゃいでいたと思うと、我ながらチョロいヤツだなと反省します。

「ナルシズムという伝染病」(p.153)

さまざまなコミュニケーションがソーシャル・メディアを通して行われることによって「心の理論」の発達が不十分になり、「共感的配慮という、辛い状況の人に共感できる能力」と、「対人関係における感受性」が低下していることも紹介していますが、こちらは個人的に半信半疑です。論旨は分かるし、心情的にも同意したいところはあるのですが、「最近の若い奴は…」的な空気も感じられる。その辺著者は正直で、証拠はないけど心配だ、という物言いをしています。

運動しろや

本書はあくまでも警鐘を鳴らす、というのが主題にある本です。そのため、何か抜本的な解決策とかは提示されません。ですが、著者なりの解決策が、「毎日少しで良いから走れ(運動しろ)」です。これはちょっと面白かった。大人ならいざ知らず、スマホ依存の中高生に「スマホ見てないで走って来い」と言っても、言うことを聞いてくれなそうです。そのためにも、小さい時からスクリーンタイムを管理すること、可能な限り子供にスマートフォンタブレット端末を与えるのは避けた方が良いと著者は言っているのですが。